2021/09/11 早朝
真城朔
カーテンは締め切られているが、その向こう側もまだ日の昇る前で。
夜高ミツル
していたところ、ピピピ……とスマホの目覚ましが部屋に響く。
真城朔
ミツルの腕の中の熱も小さく身じろぎしている。
夜高ミツル
さすがにまだちょっと眠たげに声をかける。
夜高ミツル
寝るのも早かったとはいえ、だいぶ早起き。
真城朔
返事をしたはいいものの、ぼー……になっている。
真城朔
そのつもりでいたから起きられはしたけど……
夜高ミツル
むにゃむにゃの真城を残して、ベッドを降りる。
真城朔
しょぼしょぼと瞼を上げて、真城も布団から這い出てくる。
夜高ミツル
「緑茶と紅茶あるけど、どっちがいい?」
真城朔
カフェインが多いのってどっちだったっけ……とか……
夜高ミツル
頷いたはいいものの、どうしようかな……
夜高ミツル
緑茶の方が馴染みがあるので緑茶にした。
真城朔
ホテル備え付けの寝間着姿でぼんやりミツルを眺めている……
夜高ミツル
ケトルを取って、マグカップにお湯を注ぐ。
真城朔
ミツルに声をかけられて、もそもそと戻ってくる。
真城朔
マグカップを口元に近づけ、ふー……と息を吹きかけている。
夜高ミツル
ミツルも寝起きの身体を温めるように両手でマグカップを持っている。
夜高ミツル
お茶に息を吹きかけつつ、身を寄せ合う。
真城朔
そろそろかな……といった塩梅でお茶に口をつけている。
夜高ミツル
その一日目となる今日、こんなに早起きしたのは朝市に行くためだ。
夜高ミツル
前回は素通りしてしまったので何も知らず……
夜高ミツル
せっかくだから宿泊も延長して函館を回ろう、となって
夜高ミツル
朝ごはんもそこで食べようとなり、今はお茶だけ飲んでいる。
夜高ミツル
さすがに開場に間に合うように行くのは大変すぎるので……
真城朔
久しぶりのホテルでも、くっついているのはいつもどおり。
夜高ミツル
お互いに特に急かすこともなく、まったりとお茶を飲み……
真城朔
抱き寄せられ、ミツルの胸に頬を預けている。
夜高ミツル
気づけば窓の外も明るくなりはじめている。
夜高ミツル
ハンターにとっては見慣れた光景だが、狩りの後に見るそれとは趣が違う。
真城朔
部屋の中からのんびりぼんやりと眺める夜明けのさま。
真城朔
平和を噛みしめて、ついついのんびりしてしまっている……
夜高ミツル
準備するかと言ったミツルもベッドに座ったまま……
真城朔
手を繋いだミツルにぴったりくっついている……
夜高ミツル
こんな人が多いとこくるの久しぶりだもんな……
真城朔
色々なお店があり、店員さんの声と人の声と……
真城朔
ほとんど鮮魚とかだけどちょこちょこ農作物とかあり……
夜高ミツル
そうして人混みを抜けた辿り着いた目的地は……
夜高ミツル
そしてその人混みを見守るように、でっかいイカのモニュメント。
真城朔
その人にイカが墨を吹きかけたところだった。
夜高ミツル
行こ行こ……と手を握り直してその場を離れる。
真城朔
ミツルに手を引かれ、人だかりとイカのモニュメントに背を向けた……
真城朔
食堂というか……そういう名前のお店というか……
真城朔
まあまあ人はいるけど、市場ほどの圧はない。
真城朔
テレビモニタが下がってるのとかだいぶ食堂っぽい……
夜高ミツル
表に出てた写真のイメージよりでかい……
真城朔
下半身だけのいかが乗っかってるどんぶりに……
真城朔
北海道の魚介類のおいしさは身にしみている。
夜高ミツル
お冷とおしぼりを持ってきてくれた店員さんに声をかけ……
夜高ミツル
忙しそうだけど元気よく返事をして戻っていった。
真城朔
やっぱり人のいっぱいいる場所だとあまりリラックスはできず……
夜高ミツル
なるべく隅の方に通してはもらったけど……
真城朔
隅でも人の存在があるとどうしても気にはなってしまう……
夜高ミツル
平日に来れたらもうちょっとマシだったかな……とは思うものの、着いたのが金曜の夜だったので……
夜高ミツル
とは言え予想以上に人が多くもあった……。
真城朔
久しぶりのホテルだったのもあり、やや気疲れ気味の気配がある。
真城朔
やや戸惑ったように顔を上げてミツルを見る。
真城朔
ミツルに言い募られ、ややためらいがちながらも頷いた。
夜高ミツル
頷いているところに、五目丼を持って店員さんがやってくる。
夜高ミツル
ぴかぴかつやつやの海鮮丼が二人の前に置かれている。
夜高ミツル
いくらとかカニとかはいっぱい乗ってるからいいとして……
夜高ミツル
「刺身は箸で分けるの難しいから、一口ずつ……」
夜高ミツル
「いけそうだったらもっと食って大丈夫だけど」
真城朔
迷いながらとりあえずどんぶりにまぐろを戻したけど……
夜高ミツル
お互い相手が食べている様子を見がち……
夜高ミツル
「見た目もなんかつやつやしてるもんな」
夜高ミツル
「やっぱり今朝獲ってきたやつなのかな」
夜高ミツル
もう一度丼に箸を伸ばして、米を取って口に運ぶ。
真城朔
そんな調子で、北海道を噛みしめつつ交互に食べていく。
真城朔
こういう時二人で分けるから心配になったりする。
夜高ミツル
あとのお客さんも途切れず来ているようだし、さっさと会計を済ませて店を出る。
真城朔
休日の観光地の朝といった風情で、まだまだ人が行き交っている。
夜高ミツル
今まさに市場に来たところの人達も大勢いる様子。
夜高ミツル
真城の手を取って、そんな人混みに背を向けて歩き出す。
真城朔
ミツルの手を握り返し、手を引かれるままに歩く。
夜高ミツル
ぽてぽてと歩道を行きながら頷きあっている。
夜高ミツル
普段だったらまだ寝てることもそれなりにある時間。
真城朔
他に人目のないホテルに戻ってきたので、ますますくっついている。
夜高ミツル
膝の裏にも手を差し込んで、よいしょ……とベッドの真ん中に。
夜高ミツル
真城を横たえさせて、自分も隣に寝転ぶ。
真城朔
ホテルのベッドの中、くっつき寄り添い合い……
夜高ミツル
高くなりゆく太陽をよそに、二人で眠りに落ちていった。