2021/09/22 早朝

真城朔
ビジネスホテルの扉を押し開ける。
真城朔
早朝も早朝、太陽も上がったばかりの頃。
真城朔
息を潜めて二人、狩りの帰りの暁の頃。
夜高ミツル
武器の手入れは外で済ませてきた。
真城朔
返り血もなるべく落としてきて……
真城朔
ホテルを汚さないように……
真城朔
涼しくなってきたから、着込んでいても目立たないのはありがたいこと。
真城朔
武装を外し、汚れた上着をごみ袋に放り込み……
夜高ミツル
ふー……、と気の抜けた息をつく。
真城朔
「…………」
真城朔
身軽になって、ミツルを見ている。
真城朔
「シャワー」
真城朔
「ミツ」
真城朔
「先……」
夜高ミツル
狩りが終わっても道中誰かに見咎められないとも限らず、部屋に戻るまでは気が抜けない……
夜高ミツル
「ん、ありがと」
真城朔
こくこく……
真城朔
頷いてミツルの上着を脱がしにかかる。
真城朔
「これも」
真城朔
「捨てちゃうね」
真城朔
汚れてるし破れてるし……
夜高ミツル
「ん」
真城朔
ごみ袋に詰め……
夜高ミツル
狩り用に買ってきた服は大体使い捨てられることになる……
夜高ミツル
「これもダメだなー……」
夜高ミツル
上着の下のシャツも血まみれ……
真城朔
「うん……」
真城朔
ゴミ袋の口を開いています。
真城朔
放り込みやすいよう……
夜高ミツル
シャツを脱ぎ、ぽい。
真城朔
血まみれのシャツの下から晒されたミツルの肌をじっと見ている。
真城朔
心配げ。
夜高ミツル
自分でも念の為検分している。
真城朔
じ……
夜高ミツル
そんな怪我してないつもりだけど……
夜高ミツル
アドレナリンが出てて気づいてないだけのこと、案外ある。
真城朔
ある……
真城朔
よくない……
夜高ミツル
腕を上げたり首を回したり、見えるところを確認し……
夜高ミツル
「多分」
夜高ミツル
「大丈夫」
夜高ミツル
のはず……
真城朔
見えなさそうなところは一応真城が確認しているが……
真城朔
「……うん」
真城朔
傷は見当たらなかった。
真城朔
「……打ったとか」
真城朔
「ひねってる、とか」
真城朔
「見えない、痛いの」
真城朔
「あったら……」
夜高ミツル
「今のとこは大丈夫かな……」
真城朔
じ……
夜高ミツル
「後から痛んできたら言う」
真城朔
「うん」
真城朔
こくこく……
真城朔
前回腕にきつい怪我をしたので……
真城朔
心配しています。
夜高ミツル
今回はなんとか大丈夫だった……。
夜高ミツル
はず……。
真城朔
よかった……
真城朔
たぶん……
真城朔
「シャワー」
夜高ミツル
「うん」
真城朔
「しよ」
真城朔
「身体、冷えちゃう……」
真城朔
うながし……
真城朔
あっ
真城朔
先に電気ケトルを取り……
真城朔
水を入れてきた。
夜高ミツル
あっ
真城朔
セット……
夜高ミツル
それを見届け……
夜高ミツル
「……じゃあ、先使わせてもらうな」
夜高ミツル
改めて……
真城朔
「ん」
真城朔
こくこく……
真城朔
見送る。
夜高ミツル
ユニットバスの扉を閉める。
夜高ミツル
真城はいつもミツルを心配してくれているが、狩りの前後は特にそうなので……
夜高ミツル
こういう時の気遣いはことさら素直に受け取るようにしている。
夜高ミツル
残りの下着やらを脱いで、濡れない辺りに置いておき……
夜高ミツル
浴槽に入ってシャワーを使う。
夜高ミツル
湯で返り血を流しながら、念の為また身体を検めている。
夜高ミツル
あっ
夜高ミツル
痣……
夜高ミツル
ふとももに痣ができている。
夜高ミツル
そういえばぶつけたかも……
夜高ミツル
まあこの程度で済んでよかった……
夜高ミツル
切り傷はやっぱりなさそう。骨折も大丈夫っぽい。
夜高ミツル
身体の様子を確認しながらも、さっさと洗っていく。
夜高ミツル
狩りのあとのシャワーは大体さっと終わらせる感じで……
夜高ミツル
さっと終わらせました。
夜高ミツル
備え付けのバスタオルで身体を拭く。
夜高ミツル
あ……
夜高ミツル
着替え出すの忘れてたな……
夜高ミツル
まいっか……
夜高ミツル
タオルを腰に巻きつけて浴室を出る。
真城朔
ミツルのぶんの下着や着替えがベッドの上に出ている。
真城朔
「あ」
真城朔
顔を上げた。
真城朔
「怪我」
真城朔
「とか……」
夜高ミツル
「ん」
夜高ミツル
「あ、着替え」
夜高ミツル
「ありがと」
真城朔
「うん」
真城朔
こく……
真城朔
視線は心配げなまま……
夜高ミツル
下着を取って履きつつ……
夜高ミツル
「怪我は……」
夜高ミツル
「痣がちょっとあったくらい」
真城朔
「痣……」
夜高ミツル
ここ、と太ももを指差す。
真城朔
寄ってきてじ……っと見ている。
夜高ミツル
赤紫色のあざができている。
真城朔
「…………」
真城朔
ややしょんぼりしているが……
真城朔
「俺、も」
真城朔
「シャワー」
真城朔
「浴びる……」
夜高ミツル
「うん」
真城朔
着替えを取った。
真城朔
抱え……
真城朔
とぼとぼと浴室へと入っていく。
真城朔
扉が閉められた。
夜高ミツル
しょんぼりさせてしまった……
夜高ミツル
でも隠すのもよくないし……
真城朔
しばらくして、シャワーの音が響いてくる……
夜高ミツル
やや気落ちしつつ上も着る。
夜高ミツル
いつも無傷で済ませられたらいいんだけど……
夜高ミツル
それでも心配はさせるし落ち込みもさせるだろうが……
夜高ミツル
でも怪我するよりはしない方がずっといいし……
夜高ミツル
狩りをやめられない以上は……
夜高ミツル
ベッドに座ってうにゃうにゃ考えている……
真城朔
うにゃうにゃ考えていると水音が止まり……
真城朔
浴室の扉が開く。
真城朔
ほかほかの真城が出てくる……
真城朔
髪はぺったり。
夜高ミツル
「おかえり」
真城朔
「ただいま……」
真城朔
風呂からのただいま……
真城朔
バスタオルを被って髪をわしゃわしゃしている。
真城朔
しつつ、ミツルの方へ。
真城朔
ベッドへ腰掛けた。
夜高ミツル
横並びに。
真城朔
並びました。
真城朔
しょぼしょぼ……
夜高ミツル
「お茶……」
真城朔
「あ」
夜高ミツル
「寝る前だしお湯の方がいいか……?」
真城朔
「ミツ」
真城朔
「飲んで……」
真城朔
なかった……
真城朔
「俺、は」
真城朔
「どっちでも……」
夜高ミツル
「お湯にしとくか」
真城朔
「……ん」
夜高ミツル
うにゃうにゃしてたら用意しそこねた……
真城朔
頷き……
真城朔
俯いている。
夜高ミツル
立ち上がってテーブルの上にカップを2客並べる。
夜高ミツル
そこにケトルのお湯を注ぐ。
夜高ミツル
こぽぽ……
真城朔
ぼんやり見ている……
夜高ミツル
ケトルを台に置き、カップを持って真城の隣に戻る。
夜高ミツル
「ん」
真城朔
「ん」
真城朔
受け取る。
真城朔
「ありがと……」
真城朔
両手でカップを抱え……
真城朔
ふうふう……
夜高ミツル
並んでお湯を冷ましている。
真城朔
あさどきに……
夜高ミツル
そっけない白いマグカップの中で、湯気を浮かべながらお湯が揺れている。
真城朔
透明な液体が……
夜高ミツル
ゆらゆら……
真城朔
抱えた手からぬくもりが伝わってくる……
真城朔
くらいには熱い。
夜高ミツル
温かい飲み物がおいしい季節になりつつある。
夜高ミツル
ゆっくりとお湯を口に含む。
夜高ミツル
あちあち……
真城朔
ふうふう……
真城朔
冷ましつつ……
真城朔
「……なんか」
真城朔
「すごかったね」
真城朔
「芋煮……」
真城朔
芋煮……?
夜高ミツル
「すごかったな…………」
真城朔
山形の秋といえばというのはあるが……
夜高ミツル
モノビの肉で……?
真城朔
争いが始まってたし……
真城朔
肉の取り合いじゃなくて……
夜高ミツル
芋煮の……
夜高ミツル
肉で……
真城朔
味付けが……
真城朔
すごすご退散してきた。
真城朔
食べないし……
夜高ミツル
食わない……
夜高ミツル
「……芋煮」
夜高ミツル
「普通の」
夜高ミツル
「食いたいな……」
真城朔
「ん……」
真城朔
「気になる」
真城朔
「ね」
夜高ミツル
「うん……」
夜高ミツル
「なんか……大変そうだけど……」
夜高ミツル
牛とか豚とか
夜高ミツル
味噌とか醤油とか……
真城朔
「芋煮会」
真城朔
「だっけ」
夜高ミツル
「うん」
夜高ミツル
「あれ間に合わなかったなー……」
夜高ミツル
どうやら先週やっていたらしい……
真城朔
秋田でのんびりしている間に終わってしまった……
真城朔
秋田では……
真城朔
たいそうのんびりしたので……
夜高ミツル
いっぱいのんびりした。
真城朔
びっくりしながらのんびりした……
夜高ミツル
もう普通のホテルに泊まれないんじゃ……みたいな気持ちがややあったけど、このようにちゃんと泊まれている。
夜高ミツル
ていうかこれはこれで落ち着くみたいな感じがしている。
真城朔
これくらいの狭さが……
夜高ミツル
広すぎない サービスされすぎない
真城朔
どうせくっつくし……
真城朔
いつもの感じのビジホにまったりしながら二人でお湯を啜っている……
夜高ミツル
カーテンの隙間から朝日が差し込んでいる。
真城朔
街が目覚め、人々が動き始めるのはこれからの時間。
夜高ミツル
二人は狩りを終えて今から休む時間。
真城朔
マグカップを手にぼー……となっている。
夜高ミツル
「髪」
夜高ミツル
「乾かそうか」
真城朔
「ん……」
真城朔
「お願い」
真城朔
控えめに頷く……
夜高ミツル
「ん」
真城朔
結構冷めてきたお湯を飲み干した。
真城朔
マグカップをテーブルに戻し……
夜高ミツル
浴室からドライヤーを取って戻ってくる。
真城朔
ミツルに背中を向ける形で座り直す。
真城朔
バスタオルを頭からおろし……
夜高ミツル
ドライヤーを枕元のコンセントに繋いで、スイッチを入れる。
夜高ミツル
濡れた頭に手を添える。
真城朔
添えられ……
真城朔
されるがままに頭を寄せる。
夜高ミツル
手ぐしを髪に通しながら乾かしていく。
夜高ミツル
ぶおー……と温風を送り出す音が部屋に響いている。
真城朔
当たり前だが、ホテルによってこの音が違う……
真城朔
とはいえミツルの手つきは大して変わらず……
真城朔
心地よさそうに髪を委ねている。
夜高ミツル
風の強さによって当てている時間が変わる程度。
夜高ミツル
たまにすごく弱くて困る時がある……。
夜高ミツル
今回は普通。
真城朔
ちゃんと乾いていく……
真城朔
もともと真城の髪は乾きやすい。
夜高ミツル
癖がないからだろうか。
夜高ミツル
他の人と比べたことがないのでわからない。
真城朔
ぺったりしてるし……
夜高ミツル
サラサラで……
真城朔
湯を飲んでいるうちにだいぶ水分がバスタオルに吸われていただけあり、割とすぐ乾く。
夜高ミツル
指先でそれを確かめ……
夜高ミツル
乾いたな、というところでドライヤーのスイッチを切る。
真城朔
ぼんやり振り返る。
夜高ミツル
風に乱れた髪を整える。
夜高ミツル
「乾いた」
真城朔
「ん」
真城朔
頷き……
真城朔
「ありがと」
夜高ミツル
「ん」
真城朔
ぺたんと座ったままミツルを見上げ……
真城朔
「もう」
真城朔
「寝る?」
夜高ミツル
コードを抜き、くるくるとまとめてバンドで留め……
夜高ミツル
とりあえずサイドボードに置いておく。
夜高ミツル
「うん」
夜高ミツル
「寝よ」
真城朔
「ん」
真城朔
こくこく頷き……
真城朔
布団を持ち上げ……
夜高ミツル
もぞもぞと二人でそこにもぐりこむ。
夜高ミツル
いつものように、向かい合う形で横になる。
真城朔
ミツルの胸へと顔を埋め……
真城朔
ぎゅっとしがみついて、瞼を伏せる。
夜高ミツル
真城の細い身体を抱き寄せて、
夜高ミツル
ミツルもまた、目を閉じる。
真城朔
狩り明けの身体は疲弊が激しく、
真城朔
街の目覚めにカーテンを隔て、二人はとっぷりと眠りに落ちた。
真城朔
そして夕方頃。
真城朔
秋の夜はつるべ落としの言葉の通り、日が沈むのも早くなってきている。
真城朔
カーテンの隙間から差し込む光が、部屋を薄橙に染めている。
夜高ミツル
もぞ、と身じろぎ一つ。
夜高ミツル
それからゆっくりと瞼が上がる。
真城朔
いつもの熱が胸の中に。
真城朔
すや……
真城朔
静かな呼吸の音。
夜高ミツル
起こさないようにそっと、頭に手を回す。
夜高ミツル
眠る前に乾かした髪に触れる。
真城朔
さらさら……
真城朔
丸い形の頭にさらさらの髪。
夜高ミツル
変わらないその感触を手のひらで確かめる。
真城朔
撫でられているうち……
真城朔
もぞもぞと身じろぎをして……
真城朔
やがてぱちっと瞼を上げる。
夜高ミツル
「ん」
夜高ミツル
「おはよ」
真城朔
「おはよ……」
夜高ミツル
頭を撫でながら声をかける。
真城朔
声はまだ少し眠たげではあるが……
真城朔
朝よりも目覚めは良い……
真城朔
よいものの、撫でられるとそちらに頭を寄せてしまい……
真城朔
しまうが……
真城朔
「ミツ」
真城朔
「おなか……」
夜高ミツル
「ん」
夜高ミツル
「そうだな……」
真城朔
朝もあんまり食べてないし……
真城朔
コンビニで買ってきたわけでもなく……
夜高ミツル
「なんか食うか」
夜高ミツル
「ルームサービスかなー」
真城朔
「ん」
真城朔
もぞもぞ起き上がる……
夜高ミツル
もぞもぞ……
真城朔
布団のぬくもりが恋しいぶんはミツルにくっつきつつ……
真城朔
二人でメニューを取って開く。
夜高ミツル
くっつきながら……
真城朔
ぴったり
真城朔
まあ代わり映えしないいつものって感じのメニューが並んでいる。
真城朔
ホテルのルームサービスあるあるメニューたち
夜高ミツル
定番。
夜高ミツル
定番のメニューを眺め……
夜高ミツル
「天丼にしよっかな……」
真城朔
「天丼……」
夜高ミツル
お味噌汁と漬物もセットらしい。
夜高ミツル
「うん」
真城朔
がっつりメニューだ……
真城朔
「俺は」
真城朔
「サンドイッチ……」
真城朔
だいたいサンドイッチにする。
夜高ミツル
「ん」
真城朔
重くないしその場で食べきれなくても大丈夫だし……
真城朔
分けやすいし……
真城朔
いつものチョイス。
夜高ミツル
二人分の注文が決まったので、電話を取ってそれを伝える。
真城朔
伝えてもらっている。
真城朔
電話くらいはできる……とも思うけど、だいたいミツルに任せがち……
夜高ミツル
注文を終えて電話を置き……
夜高ミツル
「ちょっと時間かかるって」
夜高ミツル
天丼が……
真城朔
「ん」
真城朔
揚げるから……
真城朔
ぼんやりと待っている。
真城朔
「山形」
夜高ミツル
くっつきつつぼんやりと……
真城朔
「次」
真城朔
「このままだと……」
真城朔
手を伸ばしてスマホを取り……
真城朔
もにもに……
真城朔
「新潟……?」
夜高ミツル
「だな」
夜高ミツル
「このまま日本海側を行くとそうなる」
夜高ミツル
北海道に行くときは太平洋側を北上して行ったので……
真城朔
「新潟……」
真城朔
「…………」
真城朔
「お米……?」
夜高ミツル
今は青森、秋田、山形と、日本海側を下ってきている。
夜高ミツル
「米……」
真城朔
いまいちイメージが……
夜高ミツル
「新潟の米ってなんだっけ……」
夜高ミツル
米のイメージがありはするが……
真城朔
「なんだろ……」
夜高ミツル
「コシヒカリ……?」
真城朔
もにもに……
真城朔
「あ」
夜高ミツル
適当言っている。
真城朔
「コシヒカリ」
真城朔
「うん……」
夜高ミツル
「合ってた」
真城朔
「最近は……」
真城朔
「…………」
真城朔
「新之助……?」
夜高ミツル
「新之助……」
夜高ミツル
「知らないやつだ……」
真城朔
「新しい品種らしくて……」
真城朔
「初めて聞いた……」
夜高ミツル
「へ~……」
真城朔
「お米も」
真城朔
「色々……」
夜高ミツル
「新しいやつが生まれてるんだな……」
夜高ミツル
農家の人の努力……研究……
真城朔
「日進月歩」
夜高ミツル
思いを馳せている……
真城朔
たいへんそう……
真城朔
田舎を走っているといっぱい田んぼ見るし……
真城朔
「……秋、だと」
真城朔
「海……」
真城朔
「人」
真城朔
「少ない」
夜高ミツル
「あー」
真城朔
「少なくなってる」
夜高ミツル
「そうかも」
真城朔
「かな……?」
真城朔
ゆうて北海道出てから結構内陸の方を降りてきたので……
夜高ミツル
「最近ずっと山沿いで進んでたからな……」
夜高ミツル
「海の方出るのいいかもな」
真城朔
「新潟」
真城朔
「海の側のが」
真城朔
「栄えてるっぽい?」
真城朔
もにもに
夜高ミツル
「へー」
真城朔
「新潟市が……」
夜高ミツル
「隣の山形は内陸の方なのにな」
真城朔
「うん」
真城朔
ここは内陸。
真城朔
「不思議」
夜高ミツル
狩りのタイミングだったので、人の多い場所を調べてきた。
真城朔
協力しあえるよう……
夜高ミツル
海側にも街はあるけど、内陸側のほうが圧倒的に人が多いようであったので、こちらに来た。
夜高ミツル
新潟は逆らしい。
真城朔
不思議……
夜高ミツル
「新潟……新潟か~」
夜高ミツル
自分もスマホを取って新潟で検索してみる。
夜高ミツル
もに……
真城朔
じー
真城朔
ミツルの調べるのを見ている。
夜高ミツル
「……あ」
夜高ミツル
「佐渡」
夜高ミツル
「トキがいるの新潟か」
真城朔
「トキ」
夜高ミツル
すいすい……と検索結果をスクロールしている。
真城朔
ミツルのスマホを覗き込み……
真城朔
「鳥?」
夜高ミツル
「うん」
夜高ミツル
スクロール位置をちょっと上に戻す。
真城朔
「鳥だ……」
夜高ミツル
嘴の長い、特徴的な鳥の写真。
真城朔
サギみたいな……
真城朔
「佐渡って」
真城朔
「島……」
夜高ミツル
「島」
真城朔
「フェリーとか」
真城朔
「ある、かな」
夜高ミツル
「えーと……」
夜高ミツル
もにもに……
夜高ミツル
「うん」
夜高ミツル
「フェリーある」
夜高ミツル
「バイクも乗せれるっぽい」
真城朔
「よかった」
真城朔
「……行ってみる?」
夜高ミツル
「行ってみるか?」
夜高ミツル
被った。
真城朔
かぶった……
真城朔
こく……と頷く。
夜高ミツル
ちょっと笑って、
夜高ミツル
「ん」
夜高ミツル
「行こうか」
真城朔
「行く……」
真城朔
「せっかく」
真城朔
「だし……」
夜高ミツル
「うん」
真城朔
「芋煮、も」
真城朔
「会」
真城朔
「行けなかったけど」
真城朔
「お店……」
夜高ミツル
「そうだな」
夜高ミツル
「会じゃないと食えないってことはないだろうし……」
真城朔
「はず……」
真城朔
あるはず……
夜高ミツル
「どっか調べてみよ」
真城朔
「……うん」
真城朔
こくこく……
真城朔
「行って」
真城朔
「みよ」
夜高ミツル
「うん」
夜高ミツル
頷いて、再び検索を……
夜高ミツル
しようとしたところで、部屋のチャイムが鳴る。
夜高ミツル
「ん」
夜高ミツル
「来たか」
真城朔
はた……
真城朔
すす……と入り口から見えないところに隠れる。
夜高ミツル
スマホをテーブルに置く。
夜高ミツル
真城が隠れたのを見て、扉の方へ。
夜高ミツル
天丼のお盆を受け取り……
夜高ミツル
テーブルに置いて……
夜高ミツル
もう一往復……
真城朔
応対させているもうしわけなさはある……
夜高ミツル
サンドイッチを受け取ってホテルの人を見送り、扉を閉める。
真城朔
「あり」
真城朔
「がと……」
夜高ミツル
「ん」
真城朔
ミツルの方へ寄る。
真城朔
テーブルに二人で並び……
夜高ミツル
サンドイッチは真城の側へ。
真城朔
椅子に腰掛け……
夜高ミツル
「食ったら芋煮の店調べてみよ」
真城朔
「うん」
真城朔
「お昼とかで……」
真城朔
食べられるとこを……
夜高ミツル
「いいとこ見つかるといいなー」
夜高ミツル
言って、手を合わせる。
真城朔
「うん」
真城朔
合わせます。
夜高ミツル
「いただきます」
真城朔
「いただきます」
真城朔
いつもどおりの唱和に、
真城朔
それぞれ夕食に手を伸ばした。