2021/09/28 夕方
夜高ミツル
空の器を前に、ごちそうさまでしたといつもの唱和。
真城朔
まさにその名前を冠した道の駅で、二人でのんびりと休憩している。
夜高ミツル
現在の目的地の新潟まで、ここからあと2時間半ほど。
夜高ミツル
もう少し休んでいっても、今日中にたどり着けるだろう。
夜高ミツル
フードコートなので二人で一人前を分け合うのも気が楽。
真城朔
フードコートとは思えない豪勢さではあったけども……
真城朔
まあでも丼を売っている隣にはフードコートではない高級なお肉のお店もあったから……
夜高ミツル
外で気軽に口にすると危なかったかもしれない……
夜高ミツル
沖縄という最終目的地は決めてあるものの、道中は結構ふわふわ。
夜高ミツル
「このまま日本海側を進んでいくなら富山で……」
夜高ミツル
新潟、長野、富山……と指でなんとなくルートを作ってみている。
真城朔
ミツルの作ったルートを延長させるようにたどる。
夜高ミツル
「そんで静岡、名古屋、関西……って感じで」
夜高ミツル
札幌から函館に行くより早く着いたな……ってなること、結構あった。
真城朔
それもだいたい二時間半で済むらしいので……
真城朔
別に札幌から函館行くのが大変だったとかではないけど……
夜高ミツル
その間はずっと緑なのでひたすら山っぽい……
真城朔
いつものとおりに悩みがちを発揮している……
夜高ミツル
ピンチアウトした画面上に、見慣れた千葉の地形も現れる。
夜高ミツル
一年前、最低限の荷物だけを持って飛び出した故郷。
真城朔
真城を伴って飛び出して以来、当然帰っていない場所。
夜高ミツル
正確には、最低限の荷物を持って出られたのはミツルだけで
夜高ミツル
真城にはそれを選ばせる余裕すらなく、着の身着のまま。
真城朔
真城がそれを気に病んでいた様子はないが……
真城朔
そんなことを気に病む余裕がなかったとも言える。
夜高ミツル
ミツルの部屋は整理して、今はきっと親戚によって引き払ってもらえているだろうが……
夜高ミツル
南側のルートをなぞっていた指を、つい、と右に逸らす。
真城朔
逸れた指先の示すところを見て、ぱち、と目を瞬いた。
夜高ミツル
「あの時、家に寄ってやれたらよかったんだけど……」
夜高ミツル
「俺らがめちゃくちゃ派手にやったからってのもだいぶ……」
真城朔
ざわついたフードコートの片隅でしょぼしょぼになっている。
真城朔
手のひらに頭を寄せることもなかなかできず……
夜高ミツル
「D7もそんなに俺たちを探してる感じじゃないらしいし」
夜高ミツル
真城に関する資料が相当めちゃくちゃにされたようで……
夜高ミツル
もし手配がかかってたら、札幌にあんなに長くは住めなかった。
真城朔
責任者らしい須藤があんなことになったり……
真城朔
いつもミツルに決めてもらってばかりの悪癖。
夜高ミツル
「真城の家も、何か持っていきたいものとか……」
真城朔
何もかもがあの夜に静止したままだった、真城の生家。
真城朔
それを最後に見たのも真城ではなくミツルの方だ。
夜高ミツル
ミツルが見た光景と、真城が知っているそれはおそらく寸分の違いもない。
夜高ミツル
だけど、それが果たして今もそうかは……
真城朔
真城にわからない以上、ミツルにもわからないことで……
真城朔
真城はテーブルの下で自らの手を触れ合わせている。
真城朔
どこか落ち着かない様子で指先を絡め、摺り合わせ……
真城朔
一瞬身を強張らせてから、ゆっくりと頬を寄せる。
夜高ミツル
「ここを逃したら、また来年か、もっと先か……ってなるしな」
夜高ミツル
積極的に追われていないとはいえ、見つからないに越したことはない……
真城朔
D7じゃなくともミツルのことを探している人はいるし……
夜高ミツル
「どっかでいい土産があったら、皆川さんたちに買っていこう」
真城朔
ひっくり返ってぐちゃぐちゃになったりもしない……
夜高ミツル
通りすがりになんか色々売ってる……ってなってた。